特集 ロマネスクの表情(2004.8)

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 これらの写真は、スペイン・カスティーリャのシロス修道院回廊にある有名な彫刻「トマの不信」の12使徒とキリストの表情をアップしたものです。

 誰もが同じような表情をしています。テーマは明確で、登場人物一人一人の個性は全く問題にされていません。しかし、どこか引き込まれるものがあります。

 初めてこの彫刻を見たとき、スピルバーグの映画「未知との遭遇」で宇宙船を眺める人々の忘我の表情が思い出されました。作者が自らの感性を表現しようとしているのではなく、何ものかが作者を通じて自らを表現している、そう言ってよいようなありようです。

 そうして見ていくと、ロマネスクの彫刻や壁画、そして教会堂の建築そのものにさえ、同じような表情がうかがえます。作者(ロマネスクの時代では石工等の職人でした)は聖なるものの顕現のために仕事をしているのです。

 やがて作者の意識が我に帰り、作るものと作られるものとの位置関係が入れ替わったとき、そして作品に人間的な現実感が現れ始めたとき、ロマネスクからゴシックへの移行が始まるのです。

MORAのデータ・ベースから、彫刻や壁画に表われるさまざまな表情を見てみましょう。

 磔刑のキリスト像も、苦悶に耐える「死せるキリスト」の表情はなく、苦痛に超然とし、聖なるものの世界に属していることを示しています。ゴシック以降の磔刑像を見慣れた眼からすると、ロマネスクの時代の意識が随分と異なっていたことが想像されます。

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