Lombardia,Piemonte 2007.10
2007年10月に、約10日間、イタリア北部のLombardia,Piemonteのロマネスク教会堂を巡ってきました。
初期の教会堂は、壁は石造りでも天井は木造であったため、雨漏りだけでなく、しばしば火災にあい大きな被害を受けてきました。このため、石工達の最大の課題は、神の国にふさわしい、石造りの天井をもつ、堅固で荘厳な教会堂を建てることでした。ローマの石積みの技術が忘れられた今、ロマネスクの石工達は新たな課題に取り組まなければなりません。
その課題は、まず、割り石を漆喰でトンネル状に固めるという方法によって達成されました。壁面に帯状になった小アーチ列の装飾(後に「ロンバルディア帯」と呼ばれることになります)を持つこの建築様式は、イタリアのコモ周辺にいたロンバルディアの石工達が広めたといわれます。その様式は、イタリア中北部から、南フランス、スペインのカタロニア地方に広がり、さらに、ヨーロッパ中央部に伝播しており、ロンバルディア様式とも初期ロマネスク様式とも呼ばれています。
ロンバルディアはロマネスクにとってまさに揺籃の地であり、早く訪れてみたい土地でした。
イタリアでのドライブはシシリーで経験しただけでしたが、極めて心地よいものだったので、ミラノを中心とする実質8日間の日程は、この地方を巡る旅としては十分なものと思っていました。しかし、私がドライブ慣れした偉大なる農業国フランスと現代産業のメッカである北部イタリアでは、交通事情にだいぶ違いがありました。郊外に出てからも、日本並みの窮屈な道路と列をなして走る長距離トラック、スピード狂のドライバー、渋滞等で、常に緊張が解けず相当疲れました。
このため、長距離のドライブは断念し、予定にいれていたミラノ東方と地中海寄りの地域は端折らざるを得ませんでした。
ロンバルディアの石工達の故郷であるコモは、ガイドブックではコモ湖畔の自然に囲まれたローマ以来の高級避暑地であるとされ、観るべき二つのロマネスク教会堂があることから、大きな期待を持って訪れたのですが、街中は途切れることのない長距離トラックと渋滞で、駐車場を探して教会堂を訪れる気力も失せてしまいました。
そんなわけで、今回訪ねたロマネスク教会堂は11に止まりました。
今回の旅の目玉は、コモの湖沼地帯の岩山にひっそりと立つチヴァーテのサン・ピエトロ・アル・モンテ教会でした。
村の入り口にこざっぱりしたホテルを見つけ、チヴァーテに一泊する幸運を得ました。
翌朝、かなりきつい山道を1時間半ほど登り、突然ひらけた丘の上に、横たわるような形をした教会堂と典型的なロンバルディア様式の小さな礼拝堂が見えた時の感動は忘れられません。
チヴァーテの村人は教会堂に自由に入れると言っていたのですが、ドアには厳重に鍵がかけられていました。内部にある国宝級の壁画保護のため、数年前から事前の許可が必要になったとのことでした。納得せざるを得ないとはいえ、全身の力が抜けるようでした。
とはいえ、小さな礼拝堂越しにひろがるコモの湖沼地帯のパノラマは、この教会堂が建てられた当時そのままの姿を見せてくれていました。